mame_usa’s diary

アメリカ生活・データについて語っています

スピード違反とサンドラ・ブランド

アメリカの夏休みはとても長いです。

うちの州では6月末から8月の終わりまで2か月もあります。

子供にこんなに長い夏休みがあったら

毎日働かなくてはならない親はどうしましょう?

 

アメリカにはサマースクールというものがあります。

サマースクールとは、夏休みの間にだけオープンするキャンプの事で

いわゆる学童のようなものです。

 

うちのサマースクールは市内の中学校校舎を使用していて

教科学習は全くなく、

子供達はクラフトをしたり、ドロケーをして校庭を駆け回ったり、

毎週火、木曜日は校外学習(Field Trip)として遊園地などに行って

夏休みを楽しく過ごしています。

 

今朝もいつものように

車で息子をサマースクールに送っていきました。

後ろのカーシートに座っている、生後1か月の息子がぐずっていたので

急いで家に帰ろうと車を走らせていました。

 

しばらく走っていると、

前方で、路肩に停車している警察車両が見え

「やばい、捕まるかも」

と思いながらそれを追い越した途端

サイレンを鳴らされ、停車させられました。

 

やってしまった・・・。

 

アメリカで警察に止められた時は

自分の車両から外に出てはいけません。

ドライバー席に座ったまま、窓を開けて

警察が来るのを待つのです。

 

少し太めの男性警察が窓に近づいてきて

怒った表情で

「制限速度25マイルの所を40マイルで走っていたぞ。

急いでいた理由は何かあるのか?」と聞いてきました。

「早く家に帰って授乳をしたかったの」と伝えると

「分かった。とりあえず免許証とRegistrationを見せなさい」と。

 

命令されたものを提出すると

しばらく車の中で待っているように指示されました。

5分後、男性警察官は戻ってきて

「今回は警告(warning)だけにしておくから、今度から安全運転をするように」

と言って、この件は終了しました。

 

以前にも、前方ライトがついていないという理由で

警察に止められた事はあったし

何か隠し事があるわけでもないし、何も怯える事はないのですが

この時私は

最近読んだ本、Talking to Strangers by Malcom Gladwellの中に書かれていた

サンドラ・ブランドさんの事件を思い出していて

少しドキドキしていたのです。

 

サンドラさんはイリノイ州出身の黒人女性で、

2015年7月10日テキサス州プレイリービューの道路を

仕事の面接を終えて運転をしていました。

 

その時、彼女の背後から警察車両がサイレンを鳴らして近づいてきたので

彼女は路肩に車を止めましたが、

その警察車両は彼女の車の後ろで止まったのです。

 

警察官はブライアン・エンシニアという男性で

彼女に「曲がり角でウィンカーを出さなかった」と伝えました。

サンドラはブライアンが近づいてきたから避けようと路肩に寄っただけなのに

それを「ウィンカーを出さなかった」という理由で違反切符をきられるのは

納得がいかない、と文句を言います。

そして彼女は煙草を吸う為に火をつけました。

 

ブライアンは煙草を消すように指示しますが

サンドラは「自分の車の中で煙草を吸ってるだけなんだから、別にいいでしょ」

と従いません。

するとここから状況が一変します。

 

ブライアンは急に立腹し、サンドラに車から降りろと命令します。

その後のやり取りは省略しますが

結局サンドラは、

ブライアンのタバコの火を消す命令に従わなかっただけで逮捕され、

牢屋に入れられるのです。

その3日後、サンドラは刑務所内の自分の部屋で自殺しました。

 

Talking to Strangersという本の中では

このサンドラの事件と他の刑事事件にも共通している、

人の心理やそれに伴う行動、

そして警察が行うトレーニングやマニュアル、その歴史の観点から

この問題を分析しているのですが

私が考えていたのは警察が行う訓練マニュアルでした。

 

ブライアン警察官は、とにかく怪しいと思った車両を

次から次へと停車させ、違反切符を沢山発行していました。

そして、イライラした行動や、不可解な行動をした人物は

要注意するようにトレーニングされていたのです。

 

サンドラはイリノイ州のナンバープレートでテキサスを走っていた、

車を止められた事でイライラしている

ブライアンの命令に従わない

という理由で怪しまれ、逮捕されるに至りました。

 

サンドラはPTSDを患っていて

その前の年、妊娠した赤ん坊を失った悲しみから自殺未遂をしています。

そして、それまでの過去に他の警察官から切られた違反切符が

合計$8000ドルもありました。

人生の再出発に出ようと来たテキサス州で、そのたった3日後にブライアンに

車を止められたのです。彼女がイライラする理由も分かります。

気持ちを落ち着かせるために煙草を吸いだしたのでしょう。

 

でも警察のマニュアルに沿ってトレーニングされたブライアンの目には

サンドラは要注意人物としか映らなかったのです。

 

もし私の車両を止めた警察官が、こういうトレーニングを受けてたとしたら?

変に動けば怪しまれるし、ただのスピード違反では事はおさまらないかもしれない。

私はそう思い、警察がくるまで座ってじっと待っていました。

 

今回は何事もなく、違反切符をもらう事もなくすみましたが

次回も気を付けようと思います。

というか、スピードには気を付けないといけませんね。反省です。

 

因みにこの二人のやりとりは、Youtube動画であげられています。

ブライアンを支持する人もいたようですが、

私はサンドラさんが逮捕されたことは

ブライアンによる「自分のいう事をきかないから逮捕する」という

我儘で短絡的、そして幼稚な意思決定からきたもので

全くの理不尽だと思いました。

皆さんはどう思われるでしょうか?

 

 

思い出しましたが

私は20代の頃フロリダに留学中していたのですが、

その頃警察に止められた話があるので、

次回はその話を記事に書こうと思います。

これはユニークな体験で今でも忘れられません。